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  • 執筆者の写真古陶磁鑑定美術館

出版記念展コラム❸ 古備前焼の年代鑑定のコツ


今回のコラムでは、実際に「古備前焼の年代鑑定」をする際の「コツ」を紹介いたします。


そもそもですが、古備前焼や古陶磁を鑑賞するのに、基本的には「鑑定」をする必要はありません。

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なぜなら、そのモノが作られた歴史や時代背景を抜きにして、その物自体を惚れ込んで使うという場合は、作られた年代や歴史は関係ないからです。


それに極論を言えば、目の前にある焼き物が、桃山時代のものであろうが、江戸時代のものであろうが、昭和期のものであろうが、使用感や性能は全く変わりません。

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なので、その器が作成された時代や、経過年数を分析・評価することは、考古学的な研究以外では、一見すると無駄なように感じられるでしょう。


しかし、それでも「気になる」のが、数寄者の「性」なのです。

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それに、古陶磁器の年代鑑定や時代判別ができるようになると、世の中にある焼き物が、ただの器でなく、「伝世品」として観察できるようになります。

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つまり、年代鑑定を通して、モノの本質を見抜くことができるようになるのです。


その物が作られた時代や歴史に思いを馳せつつ、その当時の物を実際に使えるというのは、「焼き物」ならではの愉しみ方です。


そんな愉しみ方ができる「歴史の欠片」が、日本にはたくさん残されているのです。

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備前、瀬戸、唐津、高取、有田、伊万里、伊賀、信楽、越前、常滑、丹波、萩、京など・・・。それこそ、日本全国に溢れています。


このコラムでは、その中でも「備前焼」の年代鑑定について、ポイントやコツを紹介して参ります。

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私たちは、古備前焼を中心に、日本の古陶磁器の鑑定や研究調査を行っています。その成果を通じて、日本の歴史ある焼き物に興味を持ってもらえれば幸いです。



■【 古備前焼とは 】

古備前焼は、昭和期頃までは「江戸時代の元禄期頃までの備前焼」を指してそう呼んでいましたが、時代の経過を経て現在では、江戸時代以前の備前焼を「古備前」と呼んでいます。


そのため当館の表記についても、「古備前」「古備前焼」と記載されている場合は、原則、「江戸時代以前」の備前焼のことを表しています。


また、「古伊部」「古伊部焼」とは、江戸時代の寛永年間頃(1624年)から、江戸時代を通じて行われた「塗り土」技法の作品の呼称です。


伊部手の作風は、それ以前の古備前とは、全く別物と言っていいほど特徴が異なりますので、二つの呼称を呼び分けて使用しています。


それ以外のケースや例外の場合は、注釈や注記にてご案内します。


■【 古備前焼の特徴と見分け方 】

古備前焼の年代鑑定のポイントを見ていく前に、古備前焼の基本的な特徴や、時代ごとの大まかな見分け方を解説します。


最初に見るべき特徴は、その焼き物の「姿形」です。

まずは、壺、皿、擂鉢、花入、徳利、茶碗、水指などのように、その器が、どんな目的で作られたのかを確認しましょう。


これができれば、概ね時代の区分分けができてしまうからです。


例えば、それが茶陶だった場合は、少なくとも備前焼が茶道具を作った安土・桃山時代以降の作品だと推定できますし、人形や動物などの細工物だった場合は、江戸時代の作品だと推定できるのです。


中には、角徳利のように、江戸時代の後期から末期しか作られていないなど、器種だけで作成年代を特定できるものもあります。


焼き物の姿形は、その当時の様式や文化がダイレクトに反映されていますので、まずは、最も分かりやすいその外見から年代を測定していくのです。


次に、「造形」を確認しましょう。

これは、耳付、手付、蓋付、円座、擂座、矢筈口、筒、棒の先、甕の蓋、四角、菱型、透かし彫りなどの、より具体的な意匠性のことです。


これらの造形、意匠性、作為は、当時の流行が影響しやすいため、顕著な特徴が見られる場合は、そこから年代や時代が判定できるのです。


また、壺や擂鉢のように、概ね前時代を通して作られている器種では、造形以外に、「焼け肌」、「土質」などを確認して鑑定をします。


時代によって、窯の構造や土の細かさ、成型技術や方法が異なっていますので、それらを見て総合的に時代を判定していきます。


このように、古備前焼の年代鑑定を行う場合は、ポイントを順序立てて確認していくと良いでしょう。


■【 古備前焼の鑑定 】

では、いよいよ古備前焼の年代鑑定のコツを、実際の伝世品を見ながら解説していきます。

伝世品は、【 出版記念展覧会ギャラリー 】を参考にしています。


※上記リンククリックで、ギャラリーページをご覧いただけますので、実際に画像を見ながらコンテンツをお楽しみください。


・鑑定のコツ①:「窯と焼き物の歴史を知る」

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古備前焼に限らず、古陶磁を鑑定する際は、その焼き物の「歴史」を知っておく必要があります。


鑑定したい陶磁器の歴史が分かれば、その知識を鑑定に活かせるからです。


例えば、備前焼は平安時代から生産が始まりましたが、それを知っているだけでも、もし「縄文期や弥生期の古備前焼き」と称する器に出会ったとしても、それは有り得ないことだとすぐに判断できますし、その当時の主要な生産品が、壺・甕・擂鉢だったことを知っていれば、もし「鎌倉時代の花入」と称する器に出会ったとしても、その真贋が容易に判断できるようになるのです。


陶磁器の歴史は、人々の暮らしや文化の歴史でもあります。当時の焼き物には、その器が作られた「必然的な理由や目的」が存在するのです。


そこから、焼き物が生まれた歴史的・文化的な時代背景を逆算して鑑みることで、その器の年代が大まかに判定できるようになります。


まずは、気になる陶磁器の歴史を調べてみましょう。


・鑑定のコツ②:「年代区分別の様式や流行の造形を覚える」


次に、より詳細な時代区分や年代の鑑定をするために、当時の文化や流行の様式・造形を学んでいきます。

細口花入は、江戸時代中期の元禄期を中心に古備前や古清水(京焼)、古伊万里などで作られました。古陶磁鑑定美術館では、古備前焼の年代鑑定や古備前鑑定委員会鑑定書の鑑定を行っています。
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古備前焼の年代鑑定は、古陶磁鑑定美術館の出版叢書です。古備前鑑定委員会鑑定書、古備前鑑定委員会、古備前鑑定の真贋鑑定や年代鑑定は、古陶磁鑑定美術館にお任せください。
古備前花入 古伊部花入 古陶磁鑑定美術館

例えば、目の前に上図の二つの花入が並んでいたとします。


これらは、どちらも江戸時代に作られた古備前花入です。これだけでは、どちらがどの年代に作られたのかや、どちらが古いのか、などを詳しく判別することはできませんが、以下の補足情報があったら、いかがでしょうか。


【江戸時代の古備前花入の姿形は、江戸初期頃の寛永文化、江戸中期の元禄文化、そして江戸後期の化政文化で、特徴が大きく異なります。すなわち、寛永期は、初期伊部手と呼ばれた黒紫色の焼け肌が好まれ、唐物写し等の手が作られました。中期の元禄期になると、献上手と呼ばれた赤茶褐色で口の細長い上手風の作風が選好され、そして後期の化政期には、桃山時代に流行したような荒土を使った置花入が好まれました。】


改めて、図の花入をよく見てみましょう。


上図は、「茶褐色の胎土に細口型の、いわゆる献上手の花入」です。

下図は、「黒紫色の胎土に算木型のいわゆる唐物写しの花入」です。


今度は、どちらがどの年代の品か、分かったことでしょう。そうです、上が元禄期(江戸中期)の作品で、下が寛永期(江戸初期)の作品です。

このように、時代によって、政治や社会情勢、文化など背景が異なりますので、それらの「流行や様式」を理解することで、年代鑑定が行えるようになるのです。


ちなみに、慣れてくるまでは、各時代の主流を占める作風や様式から覚えていくことをおすすめします。例えば、桃山時代の古備前焼であれば「壺・甕・鉢・建水」から学び、江戸時代なら「細工物・徳利」などを勉強するといった具合です。


いきなり、珍品や傍流の作風まで覚えようとすると、贋作を掴んでしまう恐れがありますので気を付けましょう。


・鑑定のコツ③:「数を見る、兎に角見る」

各時代の様式や流行を、書籍や図録で一通り覚えたら、後は、一つでも多くの「現物」を見るように心がけましょう。


実際に、美術館や博物館などで見るのも良いですし、古備前焼を持っている数寄者の方に見せてもらうのも良いでしょう。


この時にポイントになるのが、なるべく名品・優品を直接触って、「五感でみる」ということです。


焼き物は、見た目、手触り、質感、口当たり、風味など、人間のあらゆる感覚を使って味わうことができます。

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もちろん、図録や書籍に掲載されている品から学ぶこともできますが、実際に古備前焼を手にして見た時の感覚や、そこから得られる情報は、机上と現実とでは天地の差があると言っても過言ではないでしょう。


まさに「百聞は一見に如かず」。


ぜひ機会があれば、古備前焼を手に取って、その感覚を感じてみましょう。


・鑑定のコツ④:「他窯の作品や同年代の陶磁器を見る、知識・情報をアップデートする」

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鑑定に慣れてきて、概ね一つの焼き物の鑑定ができるようになったら、今度は、他の古陶磁器や、鑑定品と同年代に作られた焼き物を勉強すると、知識の幅が格段に広がります。


なぜなら、流行や様式と言うのは、一つの窯や陶磁器に限定して発生するものではなく、一度発生したら、その波が全国的に拡がっていくものですから、時代が同じであれば、大抵どの窯の作品にも「共通の型や意匠性」が見出せるのです。


例えば、江戸期の上手風の細口花入は、古清水焼や古伊万里焼に類品が見られますし、慶長期の矢筈口水指は、伊賀焼や信楽焼、高取焼などと共通点が

見られます。


その共通点や類似性を知っているだけで、正確な年代鑑定ができてしまうのです。

安土桃山時代の古備前焼の年代鑑定は、古陶磁鑑定美術館にお任せください。古備前鑑定委員会鑑定書、古備前鑑定、古備前鑑定委員会の鑑定に定評あり。

また、現時点では、正しい認識とされている「鑑定方法」が、研究の進展や考古学的発見によって、覆されるケースや更新されるケースが発生します。

そのような事態においても、すぐに新しい鑑定方法に対応できるよう、常に最新の研究書や伝世品を見るようにして、自分の中のデータベースを更新しておくとよいでしょう。


長文になりましたが、古備前焼の鑑定ができるようになれば、もっともっと古備前焼の世界が楽しくなります。


ぜひ、もう一歩踏み込んでみましょう。



※ギャラリー(展示会)は、以下のリンクよりご覧ください。

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出版記念展目次ページ: 出版記念展 ギャラリー目次

ギャラリーページ❶: 「安土・桃山時代の古備前焼

ギャラリーページ❷: 「慶長・江戸初期の古備前焼

ギャラリーページ❸: 「江戸前期~中期の古備前焼


※リンククリックで、展示会各ページをご覧いただけます。


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