この度、古陶磁鑑定美術館では、叢書「古備前焼の年代鑑定」の出版記念としまして、書籍に掲載している古備前焼の名品を、特別にウェブ展示にて公開する「オンライン展覧会」を開催できる運びとなりました。
今回のコラムでは、当館叢書「古備前焼の年代鑑定」の書籍出版記念展の「見所」を紹介いたします。
「古備前焼の年代鑑定」は、私たち日本古陶磁美術館が研究した「古備前焼の伝世品の時代判別データ」をベースに、主に安土・桃山時代から江戸時代にかけての、茶道具の年代区分を明らかにした備前焼の研究書です。
実際に我々も、古備前焼の研究や蒐集をする過程では、様々な困難を味わいました。
その大きな要因だったのが、「従来までの古備前焼の時代区分や年代判定には、統一された鑑定方法や評価軸が存在しなかった」という点でした。
言うなれば、これまでの古備前焼の鑑定は、「言ったもの勝ち」「何でもあり」の状態だったのです。
そのため、当時の鑑定は、各鑑定士が独自の見解や判断に基づいて行っていました。これでは、鑑定士の都合の良い判断や解釈をしてしまいがちです。また、鑑定結果もバラバラですので、信頼性も低くなってしまいます。
そんな状況を打破し、古備前焼の年代鑑定を、誰でもできるように交通整理しようと公表・出版したのが、「古備前焼の年代鑑定」です。
当書では、これまでの研究書籍や図録等では行われなかった、ある画期的な方法で、古備前焼の年代鑑定の方法を解説しています。
それは、「当時の一時記録」と「出土品」から、「伝来品」と「伝世品」とを詳しく見比べて、年代を判定したことです。
一時記録は、三大茶会記や、当時の有名茶人の茶会記を分析しました。これによって、実際に安土桃山時代から江戸時代の茶会で使われた茶道具の実態を明らかにできます。
詳細は、「茶会記を深読みする」コラムで詳しく解説中です。ぜひご覧ください。
出土品は、京都三条のせと物や町や大阪城跡、堺市遺跡や近畿等の遺跡から発掘された、安土桃山時代から江戸時代にかけての出土品を調査して、当時の古陶磁器や古備前焼の判別を行いました。
これらの分析情報を参考に、実際に現代まで伝わる「伝来品や伝世品」を徹底比較して、ついに年代鑑定が可能になったのです。
すなわち、「論よりも証拠」を重要視して、歴史的、考古学的観点において、合理的で矛盾のない年代鑑定を実現することができたのです。
しかも、なんと伝世品を、カラー画像ページ数、怒涛の74ページで大公開!!
全収録作品を、カラー画像で、詳細まで公開してしまいます!!!
まさに、タイトル通り「完全版」と言える、充実した内容になっています。
古備前焼の蒐集家様やコレクター様はもちろん、数寄者や茶道を嗜まれる方、美術館や博物館の学芸員様や研究者様、さらには、古美術商様や茶道具商様や骨董好きのみなさままで、幅広くお楽しみいただける内容となっています。
限定300部という貴重版のため、値段は10,000円と比較的高いプライス設定となっていますが、充実した内容にはご満足いただけると確信しております。
展示会の図録としてもご活用いただけますので、ぜひ、お買い求めくださいませ。
さて、少し前置きが長くなりましたが、以下にて、本題の記念展の見所を紹介いたします。
・見所❶「真の桃山時代の古備前焼を披露」
長年の調査・研究の結果、「安土・桃山時代に使われた本当の桃山茶陶」の特定に成功しました。
巷に溢れる「桃山茶陶」は、残念ながら、そのほとんどが江戸時代の作品です。美術館や博物館に陳列されている名品も例外ではありません。
展示では、「17世紀 桃山時代」や「16-17世紀」などの表記で胡麻化しているケースが見られますが、これらの表記が見られる茶道具の多くが、江戸時代の作品なのです。なぜなら、天地がひっくり返っても、「1600年以降は江戸時代」だからです。
当館では、幸か不幸か、桃山茶陶に関する長年のタブーをついに解明し、「本物の桃山時代の茶道具」を特定してしまいました。
その成果と貴重な桃山時代の伝世品を、展覧会にて存分にご覧いただきます。
この展示会を見た後、あなたのこれまでの茶の湯の常識は、180度変わってしまうかもしれません。
・見所❷「正しい年代区分別で古備前焼の伝世品を見られる」
当館では、安土・桃山時代に使われた「本当の桃山茶陶」だけでなく、江戸時代末期までの古備前焼の時代区分を、西暦・元号別で明確にしました。これによって、概ね室町期から江戸期までの古備前焼の年代鑑定が、包括的に行えます。
正しい年代観が理解できれば、贋作を掴むことや、年代を誤って相場よりも高値で購入してしまうことがなくなっていきます。
数寄者として、「モノの真実」が知りたいという欲求が出るのは、ごく自然なことです。その自然な欲望に、真摯に向かい合った結実を、どうぞお楽しみください。
・見所❸「器の画像を見るだけでなく知識や歴史も学べる」
モノの伝来や歴史が分かると、もっともっと「モノ」が数寄(好き)になります。
そして、それは、主観的な意味で「モノから物」へと変質するのです。
私たちは、ただ単に古いというだけで、美術品や茶道具を展示している訳ではありません。展示品の作られた時代や歴史観を含めて、「物」を楽しんでいただきたいと考えています。
令和時代の鑑賞は、「見る」から「五感と頭脳で堪能する」時代へと変わっていくと、私たちは信じています。いや、私たちがここから変革していくのです。
その第一歩が、まさにここから始まります。
共に、日本の古美術界の夜明けを見に行きましょう!
※ギャラリー(展示会)は、以下のリンクよりご覧ください。
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出版記念展目次ページ: 出版記念展 ギャラリー目次
ギャラリーページ❶: 「安土・桃山時代の古備前焼」
ギャラリーページ❷: 「慶長・江戸初期の古備前焼」
ギャラリーページ❸: 「江戸前期~中期の古備前焼」
※リンククリックで、展示会各ページをご覧いただけます。
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